アイデアは歯ブラシみたいなもの

 アイデアとかけて歯ブラシと解く。
 その心は?
 どちらも一つは欲しいけど、他人のものは使いたくない。

 ……と書いただけでは何の話かわかりませんね(汗)
 なので、もうちょっと詳しく話していきます。
 今回も、前回の記事で紹介した本『不合理だからすべてがうまくいく』(著:ダン・アリエリー)を使用します。ご了承ください。

自前主義バイアスとは?

 前回の記事で紹介したイケア効果によると、人は自らが労力を費やしてつくったものに対して過大な評価してしまうと書きました。
 これは実は実際の創作物だけに限りません。
 実は、まだ形になっていないアイデアについても似たようなことがいえるそうです。
 人は自分で生み出したアイデアには愛着を感じ、高く評価してしまうのです。これは自前主義バイアスと呼ばれます。

 自前主義バイアスに陥ると、そのアイデアが客観的に優れているか否かを評価することが難しくなります。
 例えば、自分では素晴らしいアイデアだと思っている事柄を他人に話してみたら、冷ややかな態度であしらわれたなんて経験はないでしょうか?
 この場合、二つの意味で自前主義バイアスが働いているといえます。
 まず、自分側に関しては「自分のアイデア=素晴らしい」というバイアスがかかっています。そのため、そのアイデアを冷静に判断できなくなっている可能性があります。
 一方で相手側からすれば「他人のアイデア=自分のアイデアではない」となります。こうなると、仮に素晴らしいアイデアであっても正当に評価するのは難しくなります。

 自前主義バイアスは、別名として「歯ブラシ理論」と呼ばれます。その理由は、この記事の冒頭に書いた通りです。
 アイデアも歯ブラシも、誰もが一つはほしいし、一つは持っている。だからといって他人のものは使いたくないのです。

グループワークと自前主義バイアス

 自前主義バイアスは、特にサークル活動など複数人で集まって作業をする際に気をつけるべき現象です。
 グループワークにおいて誰もアイデアを出さないと何も前には進みません。しかし、だからといって誰か一人が独断的にアイデアを他者に押し付けても失敗の原因となります。
 アイデアの言い出しっぺはアイデアマンを気取っていい気分でしょう。もしかしたら、スーパープレゼンテーションでお馴染みのTEDの舞台に立っているような気分に浸っているかもしれません。しかし、他のメンバーからすれば使用済みの歯ブラシを押し付けられているようなものです。
 そんなのは迷惑以外の何者でもありません。

 そうなるとグループ全体のモチベーションは下がり、最悪の場合、他人のアイデアを排除してしまうおそれがあります。何度も言うように、そのアイデアの客観的な優劣は関係ありません。

自前主義バイアスへの対処法

 では、どうすればいいのか?
 自前主義バイアスには、注目すべき特徴があります。それは「自前主義バイアスは、自分で考えたという思い込みでも生じる」という点です。
 つまり、相手に知らず知らずに誘導されて導き出されたアイデアであっても、それが自分で考え出したものだと勘違いした場合でも自前主義バイアスは生じるのです。
 その点を踏まえて考えると、グループ全体のモチベーションを上げる方法は極めて明白です。例え自分にいいアイデアがあったとしても、まずは安直に口に出すのを控えます。その上で、自分のアイデアに相手がたどり着けるようにさりげなくヒントをばら撒いていけばいい。
 ノリとしては、的外れな推理をする捜査陣の軌道修正を図る名探偵コナンみたいなものを想像するといいかもしれません。まあ、彼のように「あれれ~おかしいぞ~」なんて露骨にやると嫌われるでしょうから、ある程度の演技力は必要ですが。

 アイデアは創作活動の要となる部分です。
 自前主義バイアスに振り回されず、逆に上手く利用して人の心を動かす作品を創っていきたいものです。

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