ストーリー・ヒストリー・フィロソフィー

 ブランド・プロデューサーの藤巻幸夫氏は、生き残るブランドには次の三つの要素があるといいます。

  • ストーリー(物語):確固たる意志と、それが生まれてきた背景
  • ヒストリー(歴史):売れない時代にも負けないことによって刻み込まれた時間
  • フィロソフィー(哲学):とにかく作り続けるのだという意識

 その上で藤巻氏は、この条件を人間に当てはめて以下のように述べました。

つまり、信念を持って行動し(フィロソフィー)、自分がどのような軌跡をたどってなぜここにいるのか、なぜこれにこだわるのかという目的や使命を自覚して(ヒストリー)、自分の言葉で周囲の人々に語りかけ、人の心を巻き込みながら、より大きな仕事を実現していくこと(ストーリー)。それが自分いう人間を信頼に足るブランドとして作り上げるということです。
(勝間和代,藤巻幸夫(2009)『勝間・藤巻に聞け!「仕事学のすすめ」~自分ブランドで課題克服』日本放送出版協会,21~22頁)

 この考え方を、魅力的なキャラクターを作るのに応用しようというのが今回のテーマです。
 では、キャラクターにおけるストーリー・ヒストリー・フィロソフィーとは何なのか。それを以下で考察していきたいと思います。

ストーリー

 物語に登場するキャラクターは、通常、作中で何かのアクションを起こしています。それがなければ、いわゆる空気キャラと呼ばれる存在になってしまいます。
 ストーリーとは、キャラクターが生きる「今」という時間のことです。そのキャラクターが今という時間の中で、どのように作品という世界に影響を与えているか。それが魅力的なキャラクターを描くための第一条件です。

ヒストリー

 なんらかのアクションを起こすことがストーリーならば、ストーリー形成の源泉となるがヒストリーです。
 ヒストリーとは、そのキャラクターが生きた「過去」のことです。
 同じ行動を取るにしても、その行動に至るまでのヒストリーが違えば、キャラクターに対する印象は大きく違って見えます。
 例えば、ここに世界征服を目論む魔王というキャラクターがいたとしましょう。このキャラクターには「世界征服のために世界を混乱に陥れている」というストーリーが存在します。
 このキャラクターが何のヒストリーも持たず、ただ私利私欲で世界制服を目論んでいるなら深みのない(あるいは単純明快な?)キャラクターです。しかし、「過去の仲間を人間に殺されたので、二度と仲間を死なせないと誓った」というヒストリーがあったらどうでしょう。読者は、私利私欲で世界征服を目論む魔王よりとは随分と違う印象を抱くのではないでしょうか。
 ヒストリーは、キャラクターの性格や行動する動機に大きな影響を及ぼす要素です。深みのあるキャラクターを描きたいのならば、ヒストリーの設定はおろそかにできません。

フィロソフィー

 フィロソフィーはいわばキャラクターが持つ「信念」です。
 強大な敵を前にして、武器を取って戦うのか、それをも尻尾を巻いて逃げるのかはキャラクターが持つフィロソフィーによって決まってきます。
 フィロソフィーは自らの過去に何があったか(ヒストリー)によって形作られます。そして、形成されたフィロソフィーはキャラクターが今という時間をどういきるか(ストーリー)を決定します。
 フィロソフィーをどう描くべきかは難しい問題です。最初から首尾一貫として変わらないフィロソフィーを持ったキャラは軸のブレない存在であり、それはそれで魅力的です。
しかし、フィロソフィーが揺らぐような出来事に遭遇して悩む姿は、とても人間的でそれもまたキャラクターの魅力になりえます。
 前述の魔王でいえば、勇者に倒されるまで頑なに覇道を唱え続けるのも一つのキャラのあり方です。同時に、人間にも自分と同様に守りたい仲間がいるのだと知って思いが揺らぐのも描き方としてはありでしょう。
 小説は、キャラクター同士のフィロソフィーのぶつかり合いだとも言えます。善悪二元論で語れない重層的な物語を目指しましょう。

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