主人公の成長を描く

 主人公が困難を乗り越え精神的に成長する、という物語はライトノベルではよく目にするパターンです。ライトノベルは十代・二十代の若者がメインターゲットなので、主人公がいかに成長するかは魅力的なテーマであり、根幹をなす命題です。
 主人公の成長を描けるかは、ライトノベルを書けるかに通じる問題であると思います。
 そこで、今回は主人公の成長はどのような過程を経て成し遂げられるかを考察していきます。

拒絶するが失敗する

 成長物語の主人公は、大雑把に二種類に分けられます。自発的に行動するタイプと、しないタイプです。
 自発的に行動するタイプの主人公はとても書きやすいです。なにしろ、元々やる気があるわけですから。「悪党を倒したい」「愛する人を守りたい」「女子にモテモテになってハーレムを作りたい」など、バリエーションは色々ですが彼らは自分の目標に向かってスタートダッシュと切ってくれます。なので、こちらのタイプは最初のうちに限っては思うままに行動させれば事足ります。
 問題なのは自発的に行動しないタイプです。こちらのタイプは描くのには難儀します。そもそもやる気がない人間を動かすのは創作の世界でも現実でも一苦労です。
 では、自発的に行動しないタイプの主人公を動かすにはどうすればいいか?
 答えはたった一つ。他の登場人物や環境に振り回されるなり、巻き込まれるなりして動かざるを得ない状況に放り込むのです。
 ――自分は平和に暮らしたい。けど、いきなり街が戦場に変わったからそうは言っていられなくなった。
 ――男だと思っていた同級生が、実は女の子だった。その秘密を隠すために奮闘するハメになった。
 などなど。こちらも創意工夫次第では色々なシチュエーションがありそうです。
 自発的に行動しないタイプの主人公を上手く描くには一つコツがあります。いや、コツというかお決まりのパターンと言った方がいいかもしれません。
 それは「まずは変化や行動を拒絶すること」です。
 自発的に行動しないタイプの主人公が、物語の序盤で「どうして俺(私)がそんなことしなきゃいけないんだ!」と憤慨するのは、ライトノベルではよく見かける光景です。
 しかし、彼らは結局として変化や行動をするハメになります。なぜなら、拒絶を許さない現実や脅しを突きつけられるからです。
 ――戦いに巻き込まれたから逃げたい。けど、逃げるためには結局戦わないといけない。
 ――異世界に召喚されたから自分の世界に帰りたい。けど、帰る方法を探すためには結局召喚された異世界を生き延びて情報を収集しないといけない。
 ――興味のない相手に交際を申し込まれたから断りたい。けど、相手はなぜか自分が中学時代に書いた中二病ノートを持っている。
 などなど。自発的に動かないタイプの主人公には苦労人の哀愁が漂います。
 自分で動かない主人公には、どんどん試練を与えていきましょう。それぐらいやらないと、物語は前に進みません。

「賢者」の意義

 やる気の有無にかかわらず、主人公に動いてもらえればひとまず物語は本格始動します。
 物語が動き出したら、主人公は様々な事件やイベントを消化して、少しずつ成長を遂げていきます。
 主人公を成長させる上の重要人物が「賢者」です。
 ここでいう「賢者」とは、主人公の良きアドバイザーとも言い換えられます。イメージとしては、『ハリーポッター』シリーズのダンブルドア校長や、『スターウォーズ』シリーズのオビ=ワンやマスター・ヨーダみたいなキャラです。「賢者」は精神的身未熟な主人公を正しい方向に成長させられるように導きます。「賢者」の教えに耳を傾け、ときには自分自身で試行錯誤しながら主人公は壁を乗り越えていくのです。
 ……でも、最近では「賢者」が登場しない成長物語もよく見かけます。
 それがなぜかは私にはわかりません。ただ、今の時代は師弟というタテの関係ではなく、仲間というヨコの関係が重要視されます。「賢者」は主人公の成長をどっしり見守ってくれる一方で、説教臭くなりがちです。要するにパターナリズムです。わざわざ小説の中でまで年長者の説教なんて聞きたくない、自分の問題は自分で解決する――。
 そういった風潮の現れが「賢者」の不在の原因なのかもしれません。
「賢者」がいない物語のメリットは、主人公の葛藤を最大限描けることです。答えを教えてくる人間がいないのなら、自分や、あるいは仲間同士で大いに迷って、足掻いて答えを導くしかありません。そういう意味では「賢者」がいない物語も魅力的と言えるでしょう。
 なんてことを書いていると、この小説講座も筆者の上からの押し付けな気がしてきますが……ゲフンゲフン。
 では、お節介ついでに最後にアドバイスをもう一つ。
 もし「賢者」を物語に登場させる場合は、最終的に主人公が「賢者」を乗り越えるのが通例です。物語の終盤で「賢者」から「もう、お前に教えることは何もない。よくここまで成長したな」とか認められたり、他の登場人物から「あいつはすでに師の実力を超越している」とか称賛されるのはどこかで見たことのある光景です。あるいは、「賢者」である師匠がラスボスなんてパターンもあります。
 師を越えることは、主人公が成長した最大の証なのです。

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