トリックスター

 人間関係や社会の中には様々なしがらみが存在します。そのしがらみのせいで、普通の人間は自分のやりたいことができない場合がほとんどです。
 しかし、物語の登場人物には(あるいは現実にも)、周りの常識をブチ壊して、新しい価値観を生み出すような存在もいたりします。
 そういう人物は、民俗学やユング心理学の元型論ではトリックスターと呼ばれます。トリックスターは特に神話の中では、神や自然界の秩序を破り、物語を引っかき回すいたずら好きとして描かれます。
 トリックスターの一例としては、

  • ギリシャ神話のヘルメス
  • 北欧神話のロキ
  • 日本神話のスサノヲ

 などがあげられます。

トリックスターの特徴

 トリックスターは、破壊的で道徳に反する行為を行ったりします。そのために古い秩序が壊されますが、これは否定的にも肯定的にも働きます。
 トリックスターは、トラブルメーカーとなって収集できない混乱をひきおこすこともあれば、破壊がきっかけとなり新たな建設や創造がなされることもあります。
 トリックスターはいつも「2つの世界」をつなぐものです。思いがけない結びつきや新たな可能性を引き出す英雄であるとともに、混沌の火種となる困り者でもあります。

トリックスターの効用

 トリックスターは、「笑い」とも深い関係を持ちます。神話を生きられなくなった時代には、「道化」がトリックスターの代わりを担うようになったといえます。
 現実においても、トリックスターはさまざまな局面で顔を出します。家庭内やクラスの中の問題児、会社における要注意人物などがその例と言えます。現代のトリックスターたちは暗く、受け入れがたい側面を示す場合が多いです。けれど、その内には家庭、学校、会社を変えうる創造力をも秘めています。そこでは破壊性と創造性の両者が生きています。
 例えば、学校である生徒が校内で盗みを働いたとしましょう。これ自体は許されない行為です。しかし、その生徒の盗みがきっかけで、ではどうすれば今後そのようなことが起きないか、あるいは、盗みを働いた生徒が抱えている問題はなんだったのかなどをクラス一丸になって考えた場合はどうでしょう。本来は盗みというマイナスな行為が、クラスの生徒に話し合いの機会をもたらすというプラスに働いています。
 この場合、盗みを働いた生徒は本人が意図しているいないにかかわらずトリックスターであるといえます。
 物語では、周りの目なんて気にしないで我が道を貫く登場人物は周りから煙たがれる反面、読者からは愛される場合が多いです。
 トリックスターは閉塞した世界に風穴を開ける妙薬(それとも劇薬?)なのです。

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