キャラクターとアイテム

 いまいちパッとしないキャラに個性を与える方法の一つに、特殊なアイテムを与えるという方法があります。
 これはトールキンの『指輪物語』を想像するとわかりやすいでしょう。この物語の主人公であるホビット族の少年フロド・バギンズは、義父のビルボから金の指輪を譲られます。しかし、この指輪は冥王サウロンに関わる力を秘めていました。
 元々のフロドのキャラクターは周りが当惑するような奇人変人というわけでもありません。いわゆる普通の少年でした。ところがビルボから譲られた金の指輪というアイテムのせいで彼には「指輪にまつわる葛藤と冒険の物語の主役」という個性が与えられます。
 また、アイテムという言葉を単なる物体だけでなく動物や超常的な存在まで広げて考えることもできます。
 例えば

  • 平凡な女の子がマスコットキャラみたいな使い魔を助けて魔法少女になる
  • 冴えない高校生が特殊能力を手に入れる

 というのもキャラを立てるということにつながります。

移行対象

 キャラクターとアイテムという話題においては移行対象が広く応用が効きます。
 移行対象とは主に心理学で使われる概念で、イギリスの精神分析医ウィニコットが提唱しました。乳幼児が愛着を寄せる毛布やぬいぐるみなどのことをいいます。スヌーピーで有名な漫画『ピーナッツ』に登場するライナスの安心毛布がこれにあたります。
 人間は乳児の段階では母親と常に一緒に過ごします。この段階ではまるで母親と子どもが一体であるかのような状態です。しかしいつまでも母親にべったりというわけにはいきません。乳児から幼児へと成長するために、母親から離れて行動できるようにならなければなりません。
 ところが、それまで母親に完全に依存していた子どもにとって母親との分離は不安をもたらします。そこで登場するのが移行対象です。移行対象という母親の代わりになる依存先を身につけることで乳幼児は一時的な安心を手に入れられます。移行対象の支えを借りながら、乳児だった子どもは母親から離れて行動できる幼児へと移行していくわけです。
 心理学的には移行対象は乳幼児の段階で使われる概念ですが、乳幼児でないキャラクターにも応用が可能です。
 物語のキャラクターは様々な葛藤を抱え、不安と直面することになります。不安な状況の中で自らの支えになるアイテムこそが移行対象です。
 例えば、小説『空の境界』の両儀式が持っていたナイフや、アニメ『キルラキル』の纏流子の相棒であるセーラー服型の神衣「鮮血」も移行対象と見ることもできます。

最後には移行対象と別れる

 移行対象は成長の過渡期にある不安定なキャラクターを支えるアイテムです。しかし、キャラクターは物語の終盤において未熟な子どもから自己を確立した存在へと成長を遂げます。
 ここで問題となるのが成長を遂げた後に移行対象はどうなるのかです。移行対象を身につけたキャラクターは最終的に移行対象に別れを告げることが一般的です。それをしないとキャラクターが成長したことを証明できないからです。
 例えば、『空の境界』のラストで両儀式はこんな言葉を残しています。

 遠くて、見失いそうな険しい道でも誰かに手を握られている。
 私がほしかったのはナイフでもなんでもなくて、ただその手のひらだったんだ。この先どんなことがあったって、私はこの手を放すコトはないと思う。

 また、『キルラキル』のラストでは神衣「鮮血」との別れを拒否する纏流子に「鮮血」は以下のように諭します。

セーラー服は卒業するものだ

 移行対象との別れを経てキャラクターは大人になっていき、そして物語はひとまずの幕を下ろすわけです。

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