描写と説明

 小説の目的は事実を淡々と羅列することではありません。物語や、それに関わる登場人物を描くことです。そのためには説明ではなく描写をする必要があります。
 説明と描写の違いに明確な線引きはありません。しかし、あえて違いを述べるとすれば、描写には人間的な感覚や感情が込められているという点です。
 次の例文を読んでみてください。

【例文】
① 目の前に立ちふさがる男の身長は、二メートルを超えている。
② 目の前に立ちふさがる男の身長は、二メートルを超えている。対峙しているだけで威圧感を抱く。
③ 目の前に立ちふさがるのはヒグマのような巨漢。鋭い眼光が頭上から突き刺さる。

 例文①~③をそれぞれ見てみましょう。
 例文①では、目の前に立ちふさがる男の身長を書き表しているだけなので、これは説明です。
 次に例文②は、例文①の文章に、語り手の「威圧感を抱く」という主観的な印象が並列して書かれています。より、描写らしくなったと言えます。
 最後に例文③です。この文は完全に語り手の主観で描かれています。目の前にいる巨漢がヒグマみたいか否かも、眼光が突き刺さるという表現も個人的な印象です。
 このように、語り手の主観がどれだけ混じっているかによって、文章は描写らしくなっていきます。

心理描写

 小説という媒体は、極端なことを言えば文字の塊です。よって、マンガや映画に比べる視覚的なインパクトを与えることは困難です。
 例えば、主人公が強くなるために山にこもって修行するシーンを描きたいとしましょう。
 マンガなどの視覚的なインパクトを与えられる媒体では、主人公が大きな岩を背負ってトレーニングなどを書けば、どれだけハードな修行かが一目瞭然です。
 ところが、小説ではそうはいきません。いくら巨大な岩を背負ったと書いてみたところで、その岩が直接見えるわけではないので迫力は半減します。
 しかし、小説は登場人物の心理面をいくらでも描けるという強みを持っています。そこで重要になってくるのが心理描写です。心理描写とは、文字通り登場人物の心を描くことを意味します。
 小説では、修行する主人公の苦労を見た目で表現するのは困難ですが、主人公の内面はいくらでも表現できます。もし、その主人公が師匠に連れられて嫌々修行をしているなら、逃げ出したいけどバレたら師匠に殺されかねない、などの葛藤を描けるでしょう。
 心理描写を用いて、いかに心の動きを描けるかは、小説の評価を分ける大きなポイントとなります。

情景描写

 人は精神状態によって、見える景色や聞こえる音といったものが違って感じられます
 例えば、次の例文を読んでみてください。

【例文】
① 赤々とした夕焼けが空を彩っていた。居残り授業から解放された俺にとっては、とても清々しく感じられた。天に昇る月が俺を祝福しているようだった。
② 赤々とした夕焼けが空を彩っていた。先ほど彼女に振られた俺にとっては、とても寂しい光景に感じられた。地の果てに太陽が沈んでいく様子は、まるで世界の終焉みたいだった。

 例文①と②は、ともに夕焼け空を描いたものなのに、ずいぶんと違った印象を抱くのではないでしょうか。
 居残り授業から解放されたときと、彼女に振られたときでは、同じ景色であっても違って見えるのは当然です。
 このように、語り手の内面を、語り手の周りの環境を使って表現するのが情景描写です。

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