五感を使う

 読者の五感を刺激するような描写ができると、読者の心をより強く動かすことが可能となります。
 人間に備わった五感には以下のものがあります。

  • 視覚(目で見る)
  • 聴覚(耳で聞く)
  • 嗅覚(鼻で嗅ぐ)
  • 味覚(舌で味わう)
  • 触覚(肌で触れる)

 小説には、これら五感のすべてを描写できるという強みがあります。
 五感を使って描写力を向上するために、それぞれの感覚の特徴を確認していきましょう。

視覚

 人間が知覚する情報のうち、ほとんど視覚から得たものです。
 また最近はマンガや映画など、ストーリーの表現も視覚に頼るものが人気です。
 マンガや映画などと比べると、どうしても小説は視覚によるインパクトを与える力が弱いです。
 したがって、登場人物の内面の描写や、あるいは他の五感を刺激する表現が求められます。

聴覚

 人間は視覚に次いで聴覚にも頼って情報を知覚したり判断しています。
 例えば、ホラー映画を視聴するときに音声を消して、代わりに明るくコミカルな音楽を流してみてください。その映画の恐怖が半減するか、下手をしたら滑稽な映像に映るかもしれません。
 それぐらい聴覚情報は場の雰囲気を左右します。
 また、目には見えないけれど、何か音が聞こえるという状況は人間の想像力を働かせます。
 誰もいないはずの隣の部屋から物音がする。不気味ですよね?
 もしかしたら、家族が帰ってきたのかもしれないし、泥棒が入ってきたのかもしれない。はたまた幽霊かもしれない。などなど、様々な考えが頭によぎるでしょう。

嗅覚

「ニオイ」は「匂い」とも「臭い」とも書きます。心地よいニオイが「匂い」で、不快なニオイが「臭い」です。ここでは、便宜上「ニオイ」という言葉を使わせてもらいます。
 嗅覚によって知覚されたニオイの刺激は、ダイレクトに脳で処理されます。それを利用したものが例えばアロマテラピーです。
 ニオイは五感の中でも本能的な部分に根ざした感覚です。そのため、人間の原始的な感情である快・不快を大きく左右すると言えるでしょう。
 ニオイの描写が必要なシーンは数少ないかもしれませんが、上手く描けば読者に強いインパクトを与えられます。

味覚

 味覚は「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「旨味」といった基本味だけで構成されるものではありません。他にも化学的刺激(辛味物質、アルコール、炭酸飲料など)、舌触り(つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ、滑らかさなど)、温度(熱さ・暖かさ・冷たさ)も構成要素です。
 小説で描写する機会がもっとも少ないのが味覚だと思います。ただし、味覚自体を描写することが少なくとも、味覚を使った表現は数多く存在します。「甘い関係」「酸っぱい臭い」「しょっぱい人生」「苦い経験」「辛口評価」など挙げればキリがありません。

触覚

 人間の身体で触覚の神経が集中している場所の一つに手のひらがあります。そこで、手の動きから触覚で感じられる情報を分類してみましょう。

  • 物体を圧迫する→硬さ(硬い、柔らかいなど)
  • 横方向の動き→滑らかさ(ザラザラする、ツルツルするなど)
  • 静止接触→温度(温かい、冷たいなど)
  • 挙上する→重さ(重い、軽いなど)
  • 包み込む→全体の形や体積(大きい、小さいなど)
  • 輪郭探索→全体の形、細部の形(丸い、角があるなど)

 しかし、触覚はこれだけにとどまりません。他にも「痛い」「痒い」「くすぐったい」など多種多様です。

まとめ

 では、最後に五感による表現があるかないかによる、文章の比較をしてみましょう。

【例文】
① テーブルに鉄板に乗せられたハンバーグを口に運んだ。噛み締めると味がした。
② テーブル上の鉄板に乗せられたハンバーグが目に飛び込んできた。熱せられた鉄板からは肉の焼ける音が聞こえ、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。それを口に運んだ。噛み締めると熱々の肉汁がほとばしり、旨みが口いっぱいに広がる。

 大多数の方が、①より②のハンバーグを食べたいと思います。少なくとも私は②の方を食べたいです。
 例文のように、五感で得られた情報を描写することによって、文章のリアリティが増します。一度試してみてください。

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