アルカナ・ナラティブ/第15話/01

 元詐欺師がプロデュースする学園祭企画なんてウケるに決まっている。……世間の批判とか嘲笑を。
 現段階で学内での噂話にすぎないレベルであっても、ネット社会ではいつ何がきっかけで大炎上につながるかもしれない。
 大事故につながらないように注意しながら企画の準備を進めていかねばならない。もし失敗しようものなら、一年五組が漂流教室になりかねん。
 うちのクラス企画のネックはTRPGの具体的な中身だ。そこ件に関して、うちのクラスでは『嘘つきカフェ』という企画名に合致する内容を策定した。
 一週間ほど討論を重ねた末に、トランプゲームのダウトをトリッキーにした形のゲームを考案。
 たとえアナログゲームといえど、ゼロからルールをつくるのは時間的に厳しい。しかも、学園祭で披露するとなると、初めて触れる客人に分かりやすいルールである必要がある。ならば、多くの人が知っているメジャーなゲームに自分たちなりの味付けをした方がメリットは大きい。
 ダウトなら『嘘つきカフェ』という企画名にぴったり。また、広くルールが知られているいから初めての人でもちょっとした追加ルールを覚えるだけでプレイ可能。
 俺たちのクラスのダウトでは、RPGらしくスキルという特殊技能という概念を取り入れた。ゲーム開始前にプレイヤーたちはそれぞれジョブを選ぶ。プレイ中にジョブに応じた特殊能力が使える。
 一方でゲームを取り仕切る者(キーパー)は【悪魔】の役に扮してプレイヤーたちにダウト対決をする。
 キーパーかプレイヤーの一人が持ち札を全て出し切れば試合終了となる。
 プレイヤーが選べるジョブは以下の通り。

【ガーディアン】
・特殊能力は自動防御
・カード引き受けを一度だけ無効化する
・能力は一緒に出した数字カードのみに反映される
【アタッカー】
・特殊能力は連続行動
・三連続でカードを出せる
・ただし【悪魔】は一枚ごとにダウトか否かを判断できる
【マジシャン】
・特殊能力は任意変更
・宣告する数字を任意に変更できる
・後続者は変更後の次の数字を出していく
【リサーチャー】
・特殊能力は情報分析
・悪魔のカードをプレイヤー全員に開示させる
・見られる時間は十秒間
【ヒーラー】
・特殊能力は回復魔法
・行動不能になったプレイヤーを復帰させる
・回復魔法は行動不能者がいないと使えない
・この能力で復帰したプレイヤーはスキル使用可能

 これだけだと、複数人のプレイヤーサイドが圧倒的に有利でゲームとして緊張感に欠ける。そこで【悪魔】は以下のような能力を持つ。

【スキル宣告】
・悪魔が持つ能力
・未使用で伏せられたスキルカードの中身を予想する
・クラス宣告を受けたプレイヤーはスキルカードを開示する
・予想が的中した場合、プレイヤーは行動不能になる
・予想が外れた場合、プレイヤーはスキルカードが暴かれるが他のペナルティはない
・悪魔はクラス宣告に二回失敗すると敗北

 行動不能という概念をもう少し詳しく説明すると以下のようになる。

【行動不能】
・悪魔のクラス宣告が的中したプレイヤーは行動不能になる
・行動不能になったプレイヤーはカードを出せなくなる
・行動不能時に持っていた数字カードは伏せたまま
・ゲーム内のトークには参加できる

 ゲーム進行は普通のダウトとほぼ同じ。ただし、そこにクラスという概念が追加される。

【ゲーム手順】
①悪魔一人とプレイヤー三人が集まる
②プレイヤーがジョブを割り当てる
 ・このとき悪魔は後ろを向きプレイヤーを見ない
 ・プレイヤーはクラス割り当て時の相談で嘘を混ぜて悪魔を攪乱できる
 ・プレイヤーは重複したジョブを使えない
③ゲーム開始
 ・数字カードを切る一番手は【悪魔】
 ・二番目以降は時計回りで数字カードを出す
④ゲームを進行させて勝敗を決する

【プレイヤーの行動】
・自分のターンが回ってきたら数字を言いながらカードを出す
・能力を使用する場合はスキルカードを一緒に出す
【悪魔側の行動】
・自分のターンが回ってきたら数字を言いながらカードを出す
・スキル宣告はどのタイミングでも可能

【ゲームの勝敗】
○プレイヤーの勝利条件
・プレイヤー中の誰か一人が全てのカードを出し切る
・悪魔が二回スキル宣告を間違える
○プレイヤーの敗北条件
・悪魔が全てのカードを出し切る
・プレイヤーの二人がスキル宣告を当てられ戦闘不能になる

 ――以上がうちのクラスでやるゲームの概要である。
 クラスメイトで議論や準備を進めていけばどうにか形になるはず。
 数字カードは市販のトランプを使えば足りるだろうが、スキルカードはオリジナルをつくりたい。そこら辺は一年五組の中で絵の上手いにデザインを任せている。
 俺のお仕事は、情報のやりとりのハブになること。クラスメイト同士の連絡網を作ったり、学校側や学園祭実行局との連絡要因を務める。
 それだけ聞くと『学級長なのに仕事量が少なくないか?』とか言われそうだが、さもありなん。
 実は『学園祭実行局』とのパイプ役を誰がやるがはクラス企画運営のネックだ。学園祭に際して各クラスの学級長が集まって会議をしたが、みんなそれで頭を抱えていた。
 なぜなら、今年の学園祭実行局長が北出先輩だから。
 そりゃあ、あの人と関わるかもしれない役職なんて進んでやりたいとは思わないわな。
 逆を言えば、北出先輩に振り回される係は他の仕事を免除されるに値するだけの労力。
 となれば他のクラスメイトに任せるよりも、俺自身がその役を担った方が得策だ。
 あえて火中の栗を拾う精神とかではない。他の奴が北出先輩と関わって、そいつが潰れた場合、結局俺がケアする可能性が高い。
 そんなのは二度手間だ。ならば、最初から自分でやってしまうべきだ。
 ……仕事をきちんと部下に割り振れない困った上司みたいだが、全力で考えないようにしておこう。
 んで、今日の放課後のこと。
 俺は早速、北出先輩に呼び出しを食らっていた。
 また、むやみやたらにトラブルに巻き込まれるのだろう。
 心が挫けないように、あらかじめすべてを受け入れられるオマジナイを自分にかけておこう。
 それでは皆さま御唱和ください。
 ――もうどうにでもな~れ!

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